残酷という花嫁/こたきひろし
いし、公務員だし、好い人そうだし、見た目もわるくない。ご両親はそれなり資産家だし人柄も良さそうだし。このまま結婚したらあたし幸せになれると思うわ」
言ってから娘は思案げな目をした
「あたし正直迷ってるの。いや、迷ってたの。あの人の事」
あの人って、あの男の事」
母親は広げた新聞紙を畳むように聞いた「別れたんじゃないの?」
「うん、別れたつもりだったのね。あの人いつまでも煮え切らない人だったからさ。でも、縁談の事話したら、俺頑張るからお前の事ちゃんとするからって言ってくれたの」
申し訳なさそうに小声で娘は答えた
「だから何なの?」
母親の口調は再び火を吹いた
「だからこの縁談断りた
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