だから俺はなにものにもならないことにした/ホロウ・シカエルボク
 
どんなものも築き得ない―俺だってそうだった、たぶん、書き始めたころからの幾年かは、ずっと―昔の詩篇を漁ってみれば、確信という言葉ばかりを馬鹿みたいに繰り返していることがわかる、不安だったのだ、はっきりこうだと言えるなにかが欲しくて仕方がなかったのだろう、心には一貫性がない、それは逆に言えば、いちばん自由な状態であるということだ、どこにでも流れて行ける水のようなものだ、俺はそれを怖いと思わなくなった、いまは―人生はイズムによって伸びていく草ではない、ありとあらゆるものを飲み込んで伸びていく草なのだ、決まった土や薬などで伸びた草には、それ以外のものをどんなふうに取り込めばいいのか理解出来ない、そうして
[次のページ]
戻る   Point(2)