だから俺はなにものにもならないことにした/ホロウ・シカエルボク
 


風に消えてゆくものたちだけが本当のことを話している気がするのは、人生が砂粒の落ち方を果てしなく見つめるようなものだと朧げにわかってきたせいだろうか、明らかなものはそれ以上のどんなことも語ることはない、なのに人は確かなものばかりを有難がる、本当は知っているからだ、本当は知っていて、けれどそれを見つめるすべを知らないがために、その裏にあるものを知るすべを知らないがために、悩むことなく飲み込めるものばかりを求める、そんなからくりを昔ほど愚かしいと感じなくなったのは、それがあまりにも脆く儚いガラス細工のようなものだということがわかってきたからだ、強く叩いてはいけない、それが壊れてしまってはもうどん
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