巡り会えない誰とも/こたきひろし
 
後ろめたい気持ちになってしまった。
しかし、反面にはそれを漏らさず聞きたい欲求に駈られてしまう自分が存在していた。
単独生活の男にとってかなり刺激的な環境であた事を否定は出来ない。
私は出来うる限り物音をさせないようにした。眠っている振りをしたのだ。
下手をしたら犯罪者扱いにされはしないかという不安にたえず晒されてもいたのだ。独身の変態男が隣り合わせになって棲んでいる事に相手は警戒心を絶やさないに違いないと私は想像した。それがいっそう私を刺激してしまう一面もあった。

その日、私は週一日の休日だった。休みはほとんど出掛けない。食料を買いに近くのコンビニにかスーパーに行くくらいだった。
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