キツネと白鳥の子/丘白月
 


「卵を放っておいて何処へ行くんだい
温めないと卵は生まれないよ
遊んでる暇なんかないよ
せっかく盗んだのにムダになるよ」

「そっか!親鳥は抱いているもんね」

キツネは巣に戻って
卵を大事に身体を丸めて
温めはじめた
仲間の誘いも断って遊ぶことも無く
ずっとずっと
毎日毎日
朝も夜も
卵を自分の子供のように抱いた

やがて夏が過ぎて秋になったある日
卵が揺れ始めた

「ああ!生まれるんだね!」

キツネはじっと見つめた

小さなクチバシが殻を割って
ひながあらわれた
生まれた子は女の子だった

キツネはぺろぺろ舐めて
きれいにして
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