サイレンス/la_feminite_nue(死に巫女)
。わたしは音のない世界に迷いこみ、そこには楓が立ち尽くしている。メイプル……ひとつの幻想の物語。それは前に進む落下、地に触れて溶けた林檎の色素は、光のように砂のように空へと散らばっていく。わたしの楓。わたしのもとではない楓。愛情の文言は聖書のなかに記されたまま、何世紀もの時を忘れさられる。科学者たちはそこに真実を見つける、欺瞞ではなく。それは前へと進んでいく落下。原初の生物のように、わたしたちは後戻りの出来ない旅路を進める。そこに一人の男がいて、何気ない疑問を呈するだろう。無音の世界にある、無音の音を聞く。わずかな空の振動が、わたしの耳膜へとたどり着く。そのころには、楓は街のパン屋にあってペストリ
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