<詩「あるなんでもない日」、「白き神の抱擁」、「婚礼」、「カフェ」「君の来る日」、「山城合戦」、「冬.../タカンタ、ゴロキ、そしてパウロ
 
。窓を開けると気持ちのいい海の空気が流れ込み、いつも新鮮な初夏の香りを生み出していた。
あたしの部屋も家具もおなじ間取りと造り。

 杉谷家に来た次の日の夕暮れに、あたしは詩織の部屋へお茶に招待された。
 彼女は話をしているあいだ、あたしを見て時々微笑した。詩織の想像していた以上の優しさがあた
しをほっとさせ、そして、彼女が素晴らしく溌剌として深窓の令嬢でありながら渙発な輝きを持ち、
その美しさが親しみを増してくるたびにあたしはこの館にいるのだという現実感が浮き上がり、それ
をしっかりと保とうとした。彼女の眼は眩しかった。あたしが思わず顔を俯けると、「どうしたの、
わたしの眼を見な
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