<詩「あるなんでもない日」、「白き神の抱擁」、「婚礼」、「カフェ」「君の来る日」、「山城合戦」、「冬.../タカンタ、ゴロキ、そしてパウロ
 
見ないとだめよ、恥ずかしがらないで、ねえ、わたしってとても変わっているのよ」。
詩織は薬指であたしの頬を跳ね刺すしぐさをした。「そしてね、女の子というものは、幼い時、この
春を生きているうちは背中に小さな羽みたいなものがあるだけなのよ、そうしてね、夏がきて恋をす
るとそれが鳥の翼になるのだわ。そうね、わたしはなぜだかわからないけれど、あなたが好きになっ
てしまったの、だからね、恋はあなたとしかしないつもりよ」。彼女は背中をそらして胸を波打たせ
ながら鼻と唇を手で押さえて笑った。あたしは意味がわからないまま彼女を見つめかえし、しかしな
ぜか不思議な愛情を感じたのである。

「幸恵さん
[次のページ]
戻る   Point(1)