スケート場にて/コタロー
 
ひとの群れが大股で進んでいくにつれて、あたしたちの後ろに退いていく。
道を歩く人の顔始め蒼白かった。娘の手を引いた母親は丸い体を茶色の毛皮外套に包んで僧侶のよう
に見えた。小さな男の子と女の子が手を繋いで歩いているのを見てあたしは微笑み、それは、あたし
に幸せな時間の訪れを感じさせた。

 あたしたちの眼の前に大きなまるい形をした白い寺院のような建物が見えた。「着いたわよ」幸恵
さんが笑みを浮かべながら振り向いて言った。あたしたちは車を降り、小道をスケート場の方に向か
って歩いていった。こざっぱりとした外套に身を包んだひとたちが小道に群がっていた。あたしたち
は、さらに歩いていった
[次のページ]
戻る   Point(1)