抜歯の周辺/春日線香
リンの首はメトロノームのよう。
ラウンジの床は蜂の死骸で埋め尽くされて足の踏み場もないほどだ。
膝のあたりまで泥水が来ているので歩くのも慎重になる。自転車の残骸や倒れた自販機をやっとのことでまたいで、図書館のほうへやってきた。途中、水面を小さな紫色の花が埋めた小道を折れると、水没してしまった地下鉄への出入り口は板で塞がれて、そのあたり一面は髪の毛に似た藻で覆われて全然通れなくなっていた。
昼も夜も同じ靴を履いてきてしまったと考えながら話を聞いていた。植物は暗闇で眺めるべきではないかと熱弁している人。ひまわり、八つ手、モン
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