紫衣からの手紙/コタロー
ました。先生は、郊外にある企業家の別邸であった西洋建築の屋敷に住んでおられます。部屋がふた
つのところへ、わたしをふくめて五人の寄宿生でした。わたしは離れの部屋で璋子さんという背が高
くて頬にそばかすのある気のおけない娘さんと、おとなしくて小説を片時も手放せない暁美さんとと
もに暮らすことになりました。
向坂先生は静かなひとです。でも、優しく愛情に満ちたカトリックを信仰しています。もともと学
校がカトリック教会の設立ですから、先生もそうなのかもしれません。おそらく、遠くない先にわた
しもカトリックに入信するはずです。
ところで、わたしも由梨絵さんもご存じのように詩がとても
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