杉谷家にて/コタロー
ており、詩織もまたその隣に掲げられるのだろうかと、あたしは
思った。図書館には多くの本があり、慈子様はあたしに好きなだけ読むことを勧めた。その書物の言
葉は、あたしに知性と教養を与えてくれるだろう。
詩織は奥行きがあり木目のはっきりした板の張られた壁が気持ちのいい部屋に暮らしていた。子ど
もには少し大きすぎるかもしれない机と、革のソファに木のベッド、高価なアンティークの家具があ
った。窓を開けると気持ちのいい海の空気が流れ込み、いつも新鮮な初夏の香りを生み出していた。
あたしの部屋も家具もおなじ間取りと造り。
杉谷家に来た次の日の夕暮れに、あたしは詩織の部屋へお茶に招待された
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