響き/パウロ
う
いつの日かぼくを見てくれ、お願いだから
さあ、眼をあげて、ぼくの眼、ぼくの愛しい眼を
いやだめだ、もう終わりだ
曲の最後の音は、多くの指でかき鳴らされずっしりと重い
ピアニストは狙いを定め、猫のように正確に一つの別個の小さな黄金の音を出した
音楽の堀は立ち去った
主人は、この曲は長いこと弾いていませんでした
ピアニストの妻が言った
客の一人が
いやあ、この曲は最高傑作ですよ
最後のあたりでちょっとばかり響きをモダンに変えているようですが
ぼくはドアの方を見ていた
そこでは黒い髪の小柄な女性が途方に暮れたように微笑みながら
ここの女主人に別れを告げてい
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