響き/パウロ
ているところだった
まあ、とんでもない、これから皆さん、一緒にお茶を飲んで
それからまだ歌もありますのに
しかし女性はドアに向かった
そのとき、ぼくは悟ったのだ
ぼくに音楽は最初、牢獄のように思われた
その牢獄のなかで、二人は音に縛られて、互いにほんの六、七メートルの
距離に座っていなければならなかった
しかし、それは実際には信じがたいほどの幸福だったのだ
音楽は膨れ上がって魔法の硝子のように、まさにふたりを取り囲み
中に閉じ込め、きみと同じ空気を呼吸するようにしてくれた
それがいまやすっかり砕け散り粉々だ
きみはドアの向こうに消えようとし
ピアニストはグランドピアノ
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