ピアノ/パウロ
白樺の木の輝かしい樹皮に眼をやり、自分が持っているのは
手ではなく、小さな濡れた葉に覆われ傾げられた枝なのだ
はるか彼方で轟いている滝と
小道でさらさらと音を立てている長い金のしずくの両方をぼくは感じ取っていた
空を覆った蒼い瑪瑙、噴出された脂の匂い
ぼくは自分自身をすべて自然のなかに注ぎこみたかった
きみはうっすらと笑みを浮かべて、雨の後っていいわねと言った
凪いだ風、上には太陽、樹々がわななき、ぼくのこころは震えていた
それはこんなふうに起こった
ぼくたちは友人の家に向かった
ぼくたちは工作室に通された
彼は大工仕事をしていて、膠とおがくずの気持ちのいい匂いがして
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