ピアノ/パウロ
 
していた
彼の部屋に移ると、そこは日当たりがよく、ちょっと狭苦しい感じだった
ビスケットとお茶を飲みながらぼくたちは話をした

友人宅を出て橋を越えきみの家への上り道を登っていたとき
きみは煙草を吸いたくなった
なんてお馬鹿さんなんでしょう、シガレットホルダーを忘れてきちゃったの
ねえ、あなた、ひとっ走りして取ってきてちょうだい、煙草が吸えないもの

ぼくは笑いながら、きみのひらひら動く睫毛とうっすらとした微笑みに口づけをした
きみが出迎えたのは、庭園の舗装された部分、ベランダの階段の脇だった

わたしの留守中に主人が町からから電話してきたの、十時に帰るんですって
何か起
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