You Can't Always Get What You Want/ホロウ・シカエルボク
たまに優しくしてくれる顔馴染みの立ちんぼは見かけなかったし
つるんで出かける数少ない連中もこんな天気じゃ…
薄い上着の襟をナーヴァスに直して
針のような雨を見上げ続けている
なにが悲しいってわけでもない
なにか悔しいことがあったわけでもない
心躍るような出来事があったわけでもなく
怒りに震えるような事件が起こったわけでもない
臍の緒のように感情は切り取られて
ないわけではないけれどあるとも言えないような在り方で転がっている
雨粒は輪郭を明らかにしてくれる
それはちょっとした慰安だ
肉体や、体温のことを
確かに思い出させてくれる
おれもまだそんなものを所有しているのだと
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