君よ、空は明るい/ホロウ・シカエルボク
 

なにかを探しているのかと思ったがそうでもなく
ぼんやりと自分の草履の先を眺めているだけだった
頭がおかしいのかもしれないと思ったが
瞳には意思があり過ぎた
俺は不思議とその女が気になって
一時間近く側に立っていたが
女は俺に興味を示さなかった(あるいは気づかなかったのかもしれない)
が、立ち去ろうとすると
俺の上着の裾を抑えて離さなかった
なので俺はもう一時間立ってみた
どうせ急いでやらなければいけないこともなかったので
もう一度同じことを繰り返して
女が初めて口を開いたのは三時間後だった
すでに日は傾き始めていた
「どうしてそんなにたくさんの死を思うの」と

[次のページ]
戻る   Point(3)