次郎狸/北村 守通
 
「ひやぁっ!」
声にもならない悲鳴がのど元までこみあげたそのとき。
ズドン!と雨戸が吹き飛ばされるとそこから黒い塊が飛びこんで来て化け物にぶつかっていった。不意をつかれた化け物は大きくのけぞった。黒い塊はむくむくと大きくなるとやがて真っ黒な大入道に変化していった。
「グワォン!」
と大入道が太く鈍い咆哮をあげた。真っ黒な頭の中に真っ赤な大きな口が開いた。
 怒った化け物が大入道に襲いかかった。大入道も負けじと化け物をたたきつけた。二匹は一進一退を繰り返しながら激しく戦い続けたが、ついに大入道の大きな口が化け物の喉笛に噛みついた。
化け物は悲鳴をあげ、苦しみ、のたうち回った。やがて最後の
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