次郎狸/北村 守通
後の力を振り絞って大入道を引きはがすと壁を破って外に転がり出た。それを見届けた入道も、その場にばたりと倒れ込んだ。そして大きな体がみるみるしぼんでいった。
与一郎がおそるおそる外に出てみると。
先ほど化け物が出ていったところに喉元を食いちぎられた白い大蛇の死骸が転がっておった。
そして家に戻ってみると。
大入道が倒れ込んだあたりには力尽きた一匹の若い狸が横たわっていた。
「次郎・・・」
けれども次郎が与一郎の呼びかけに応えることはなかった。
翌日。与一郎は次郎も大蛇も手厚く葬ってやった。与一郎はそれからも山を下りることはなく、一人で木を伐り続けた。いつまでもいつまでも一人で木を伐り続けた。山には与一郎が斧をふるう音がいつまでもいつまでも響いていた。
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