次郎狸/北村 守通
んな場所でも構いません。土間をお借りするだけでも結構です。お願いします。」
こんなさびしい山の中、ましてや夜にか弱い娘を外に放り出すこともできず、与一郎は娘を家にあげてやった。
「明日、朝一番に道を案内して差し上げましょう。ごらんの通りなにもございませんが、今日はどうぞこちらでゆっくりお休みください。」
そして自分は土間にござを敷き、娘に背を向けてごろんと寝転がった。
「ありがとうございます。ありがとうございます。」
娘は何度も礼を言った。が、やがてたまっていた疲れがどっと出たのか、ぐったりと横になるとすやすやと眠り始めた。
「かわいそうに、さぞかし怖かったんじ
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