Happy Birthday/塔野夏子
も云わず 街路を行進してゆく
絵たちはどこへ喪われてしまったのか
それをもう誰も 問うこともない
*
君が居る
君が君であるままに
まじりけなく其処に居る
そんな君に対峙するには
僕の持つ仮面の数は
あまりにも多すぎる
ただ其処に君が居る
そのことだけを
ただしずかに心に映す
*
夏が歌うから
私たちも歌いながら歩いた
夏の歌は まるで終わりがないようで
それでいて最初から
美しくものがなしい終わりに満ちていた
*
おそるおそる触れる
そっと触れる
手のひらでではなく
指さきでで
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