水源地/ただのみきや
くりと
逸脱を求めて泣きじゃくる
ぬるい雨は乾き
朴訥な筆はかすれ
夏は口移しで宿る
眠りの中で翼を切り落とした鳥は
暁に追われて目を覚ます
重体患者の意識が戻るように
時の流れに馴染む頃
鍵も鍵穴もない場所に腹をすかした青空があった
術もなく囀る人々の孤独の狼煙にも何食わぬ顔の
解き明かす者は自らをさらけ出す
意味は影 追っても踏んでもするりと逃げて
振り向く顔はいつも光に溶けている
細道を抜けて行こう
懐かしい匂いに惹かれ
澄んだ死体が待つ水辺
沈まない夕日にオオミズアオが揺らめき渡り
胡桃の梢の辺り
不意にキアゲハが追い立てる
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