すいそう/田中修子
 
はじめての死者が出たその朝、かき集めた死骸を方舟の外に放った。はじめての死骸は水葬するつもりで、柔らかい赤い毛布に包んだのだった。そうしてその赤い布を金色の光線と薄暗い水色の入り混じる水平線へと放り投げた。
 赤い布は内側から風船のように膨らみ、やがてパチンと千切れた。内側から何羽もの白いハトが飛び立ち、あかるい陽の差すほうへ羽ばたいていった。

 それから幾度も幾度も水葬を行った。くずれおちた死骸は途中から布に包むのはよして、手でつかみ、放って投げるようになった。わたしの手はそのたびに、内側から薄紫色に輝いた。そうして方舟からはなれると、かつて人や動物で、死んで、黴になったものは、たくさん
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