すいそう/田中修子
 
 緑色の藻はいまやガラス質や機械だけでなく、ほかの人間のつがい・動物のつがいを覆うようにもなった。特に人間だ。生きる意志のないものから、一晩で黴が皮膚を覆いつくし、崩れていった。夕暮れに発症し、朝には小さな山になるのだった。
 紫陽花色の水にふれて輪郭が崩れていった幸福な死の様相と、あまり、かわらなかった。みな、ふっとロウソクを吹き消すように、静かに命の灯を消してゆく。
 あの、首を切って死に損なって以降燐光をはなつようになったわたしの手同様、目もおかしくなったんだろうか? 時折、命が灯にみえるようになったのだった。そのひとの皮膚をとおりこし、輝いている命、弱っていく命が見えるのだ。
 はじ
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