すいそう/田中修子
 
。彼の命は灯というよりはむしろ、巨大なたき火……炎に近い。数メートル近く赤々と光る炎。燃え上がる火柱にあおられて、わたしの髪の毛がチリチリと焼ける音さえ聞こえることがあるような気がする。
 こんなに穏やかな人のどこにこんな力があるのだろう。
 行為が終わる。火をもらって、この瞬間だけ、指先すべてに血が通ってあたたかくなる。

 「コンピュータ先生に拾われて孤児院に行く前さ。おまえはまだ小さくて覚えていないが、おれは災厄があってから拾われたからね」
寝転がりながらしゃべってくれたことがある。
「村があったんだ。両親がいて、親戚がいてね。米を作っていたのさ。田んぼがあって、稲刈りが終わって
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