すいそう/田中修子
 
彼はいつも淡々として、安定している。静かな声で話す、でも時たまくだらない冗談を言って笑わせてくることもある。わたしは子どものように思いついたことをなんでも話す。彼はわたしの言葉に耳を傾ける。
 夜遅く眠り、朝早く起き、ともに仕事に出かけ、一緒に方舟のなかで食料を調達し、時間になれば料理を作る。彼の作る野菜スープやサラダがとてもすきだ。ざくざくと刻んで、すこし塩味をつけているだけなのに、ほろ苦いのや甘いのや、たくさんの味がする。そうして、ときおり、わたしを抱く。
 のしかかられて彼の背中に手をまわし、爪を立てながら、わたしは性的な快楽よりむしろ、彼のなかの命の灯に照らされることに喜びを感じる。彼
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