月の下、ふたつの孤独/ホロウ・シカエルボク
 
前は?」
 「湯江。」
 ゆえ?と女は首を傾げた。
 「それ、苗字?」
 俺は頷いた。
 「名前は?」
 「升。」
 「みのる。」
 「変な名前。」
 俺は同意した。
 「役所とかでよく聞かれる―外国のかたですか?って。」
 今度はあはは、と笑う。失礼なもんだが、悪気は感じられなかった。
 「仕方ない。」
 「そうだね。君の名前は?」
 「優衣。」
 「苗字は?」
 「捨てた。」
 「ふうん。」
 いろいろあったんだろうな、と思って俺は何故か聞かなかった。優衣は、それが気に入ったようだった。少し親密な感じになってにんまりと笑った。
 「とっておきの遊びがあるん
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