月の下、ふたつの孤独/ホロウ・シカエルボク
 
るんだけど、やってみる?」
 「それって…」
 「いやらしいおじさんが考えるようなことじゃないよ。」
 俺は苦笑した。
 「それなら、やってみよう。」
 優衣はさらに俺を気に入ったようだった。

 数分後、俺たちはジェットコースターの乗り場に居た。それほど大きくはないコースターが、俺はどうしてまだここに居るんだろうというような顔をしてもう来ない客を待っていた。優衣はその車両の前に降りた。
 「あたしが走って逃げるから、おじさんは捕まえて。鬼ごっこ。」
 「マジかよ。」
 優衣はにやにやした。
 「怖い?」
 「そりゃ、怖いよ。錆びてるぜ、このレール。」
 「それは大丈夫。
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