月の下、ふたつの孤独/ホロウ・シカエルボク
 


 少し休んでから俺たちは歩いて、とある建物へついた。着替えがたくさんある、とのことだった。従業員のための施設らしい。俺たちは一番現実に近いクリーンスタッフのものを着た。もちろん少し離れて。それから優衣に誘われて展望台へ行った。草に塗れながら静かにフェイド・アウトしていく冴えない遊園地の全貌がそこに在った。手すりにもたれて俺はそれに魅入った。死んでいく遊園地。それと意味のない人間。
 「こっち見て。」と、優衣が言った。俺は優衣の方を向いた。
 「あたしと一緒に、ここで生きて。毎日追いかけっこして。誰にも知られずに、二人だけで生きて。」
 俺は黙って優衣の目を見た。それは悪くない選択に
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