月の下、ふたつの孤独/ホロウ・シカエルボク
的に蹴り上げた。ようやく水面に辿り着き、岸を見つけて這い上がった。そこに仰向けになって気持ちを落ち着けていると、優衣がどこかから現れた。当然、俺と同じようにずぶ濡れだった。優衣は年齢の判らない笑みを浮かべて、月の光を遮りながら俺を見降ろしていた。そして、飛んだんだ、と小さな声で言った。俺は誇らしげに頷いて見せた。冗談のつもりだったが、優衣は笑わず、俺に寄り添うように寝転んだ。
「飛んでくれたんだ。」
ああ、と俺は言った。
「絶対、なんかあるんだろうと思ったんだ、なぜか。」
優衣は少しの間俺の顔を見ていたが、やがて口元を両手で隠しながら笑った。なぜかそれは泣いているみたいに見えた。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)