月の下、ふたつの孤独/ホロウ・シカエルボク
のをやめて、窺うような仕草をした。もう追いかけっこじゃないな、と俺はまた苦笑した。というか、優衣のほうも初めからそのつもりではないみたいだった。追いかけっこは、このあとになにかを見せるための口実だろう。俺の目にはさっきからループ・コースが見えていた。あそこで優衣は、なにかを仕掛けるつもりなんだ。俺は立ち上がり、また走り出した。優衣も満足げにまた先を急いだ。毎日走っているというのは本当だろう。体力も、足さばきも見事なものだった。ループまでそんなにはかからなかった。そんなに大きなコースじゃない。普通に乗ればあっという間のものだろう…驚いたことに、優衣はレールに手をかけてそこを上り始めた。嘘だろ、と俺は
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