月の下、ふたつの孤独/ホロウ・シカエルボク
夫。あたし毎日ここ走ってるけど、どこもおかしくないよ。色が変わってるだけだよ。」
優衣は挑戦的な笑みを見せた。判ったよ、と俺は言った。
「お前を信じて、やってやる。」
そう来なくっちゃ、優衣は叫んで、レールの上を全速力で駆け始めた。
月明かりに照らされた廃遊園地のジェットコースターのレールを俺たちは躍起になって走った。優衣は時々振り返って、俺がきちんとついて来ていることを確認した。俺は初めこそ恐る恐るだったが、吹っ切った今となっては全速力でも走れるようになった。ただ、日ごろの運動不足は如何ともしがたい。時々立ち止まって呼吸を整えなければならなかった。俺がそうなると優衣は走るのを
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