月の下、ふたつの孤独/ホロウ・シカエルボク
いるようなアトラクションの数々だった。けれど、電気を止められ、二度と動くことなく錆びついていくだけのそれらはたまらなく魅力的だった。無機物の死体は腐ることはない、人間と違って。彼らはおそらく生涯よりも長い死を生きるだろう。楽し気に彩られた動物を模した乗り物の表情は、そんなことを語りたくて笑い泣きをしているみたいに見えた。開けているせいで月の光を遮るものが無く、散策には困らなかつた。土産物屋やレストランに入り込んで、休憩をしながら二時間ほどが過ぎた。
メリーゴーランドのゴンドラに乗り込んで休んでいる時だった。背後のガラスがノックされた気がした。風かなと思って振り返ると、汚れた窓からこちらを覗
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