月の下、ふたつの孤独/ホロウ・シカエルボク
を覗き込んでいる女が居た。ぎょっとしたが、足音がしたので生きているんだと思った。
「なにしてるの、こんなとこで。」
女はそう言いながらゴンドラの中に入って来て、俺の向かいの椅子に腰かけた。顔の輪郭を覆うくらいのボリュームのないショートヘアーで、切れ長の鋭い目をしていた。
「なにって…暇潰しかな。」
「良い子は寝る時間。」
「生憎不眠症なんだ。」
あらら、と女は目を大きく開けた。まだ二十歳にはなっていないだろう。
「本当に居るんだ、そういうひと。」
俺は苦笑した。
「俺もそう思ったよ。医者に言われたとき。」
ふふふ、と女は楽しげに笑った。
「おじさん名前は
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)