都市の伝説じゃなくて/こたきひろし
 
だテレビが出回っていない時代で娯楽は乏しかった。都会ならまだしも山あいの暮らしだったから無理もない。
我が家の子沢山もその辺に理由がありそうだった。

父親はぼそぼそと語り始めた。家族はちゃぶ台の回りに集まり黙って聞いた。
俺が餓鬼の頃の事だ。と父親は言った。
「今も貧乏だが、その頃はもっと酷くて、間引きが頻繁にあったんだ。つまりよ、予定外の妊娠はよくあったが、産んでも食べさせられないから出産と同時に可哀想だが、一思いに鉈を振りおろしちまうのさ。」
そんな話、俄に信じ難いが父親は真顔で言った。
「父ちゃんいくら何でもそんな事したら捕まって刑務所行きだろ」
と一番上の子供が聞いた。
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