クチナシと蜘蛛/田中修子
だわきっと。
正確無比の編み手
蜘蛛さん、どうかあなた わたしの髪の毛に その
銀色の籠をかけて そしてまた編んで編んで、編んで
立体籠模様のレース飾りにしてはくれませんこと?
ニシン業へ冬の荒波へと出かける男たちのために女が編むという
セーターの模様 「海の男の鉄(シーメンズ・アイアン)」のように
銀の籠模様をつないで
わたしがそこに入れるのは
果てしなのない空想!
スーパーと保育園とおうちの行きかえりだけの
狭い世界でも ふと 耳を澄まし目をとめたとき
毎日違う音の雨が降り
紫陽花が咲き
小さな庭にはもみじがいつの間にか生えてきたの! 若葉色の葉と朱の茎
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