だいどころ/田中修子
す、あの日々が、あんまりととのっているから、そこに少女のまま、ありつづけるんです。
ほら、前髪はハツリときりました。まゆげをかくすんです。それで少しゆるく、ふわふわにした髪の毛、椿油を塗りこんで、つばきが彫りこまれているつげの櫛で梳くわ。
いくたびも、いくたびも、赤く火花が散って、この黒い髪の毛に反射して燃え上がるまで。燃えあがるわたしの髪の毛、ここは牛車のうち側か。
(あなたは子どもね--ほんとうに、子どもね。子どもをうんでみればわかるわよ。)
(せんせいわたしは、ときをとめたんです。まるで、こどもをだいどころに閉じ込めてしまいそうでこわいんです。)
幾百も 幾百も 耳をふさいだ掌にき
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)