旅の終わりに/嘉野千尋
 


   喜びも、優しさも、喪失も悲しみも、
   言葉によって届けられた
   わたしは面影を探して立ち止まり、
   時に夢を見たような気がする
   言葉しかない世界で、
   紙の温もりからも遠いはずの画面越しの言葉が、
   時に海を越えた声を届けて寄こした


   差し出す手の届かない場所で、
   わたしも彼女も静かに泣きながら眠った


   忘れかけた声を、抱きしめるようにして


   返されることのない言葉を恐れる一瞬の向こうに、
   届けられる言葉があり、
   向けられる眼差しがあり
   手紙の書き出しの言葉を、
   何
[次のページ]
戻る   Point(4)