旅の終わりに/嘉野千尋
喜びも、優しさも、喪失も悲しみも、
言葉によって届けられた
わたしは面影を探して立ち止まり、
時に夢を見たような気がする
言葉しかない世界で、
紙の温もりからも遠いはずの画面越しの言葉が、
時に海を越えた声を届けて寄こした
差し出す手の届かない場所で、
わたしも彼女も静かに泣きながら眠った
忘れかけた声を、抱きしめるようにして
返されることのない言葉を恐れる一瞬の向こうに、
届けられる言葉があり、
向けられる眼差しがあり
手紙の書き出しの言葉を、
何
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