雪〜バイノーラルならば雪/黒田康之
値を捕まえました
窮屈な字で書かれた文字は私をまた眠りの世界に引き込もうとします
それは昔見た夢を思い出すように不確かな場所であって
私は座りながらふとおじいちゃんの夢を見ました
僕はさっきまでの僕とは何の関係もない他人としてここに立っています
香りも色も確かにあって、おじいちゃんはご飯を食べていました
僕は手袋をはずして
私はおじいちゃん呼ばれて一緒にご飯を食べました
自分の手を握ってみました
若布の酢の物と野菜の煮つけと鮭
それは明らかに他人の手であって
すっかり満腹になった私はおじいちゃんからお小遣いをもらいました
吹き上げる吹雪に乗って
もう大人なん
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