火の車と水の車/こたきひろし
 
いてちょっとお腹が出ている姿はいかにも洋食屋のコックらしかった
童顔で親しみやすく饒舌で接客にはたけていた
二十代半ばで店を持つくらいだったから人脈もあった
友達や仲間が足しげく店に顔お出して時には手伝ったりしていた

若い主人は女性との付き合いも頻繁にあった
その中にはいかにも水商売を匂わせる派手な女の人がいた
その人が勤めるお店に連れていかれ生まれて初めてウィスキーの水割りを飲んだ時私は未成年だった
それから主人は私に賭け事を教えた
そしてついには吉原へ連れていかれた
「飲む打つ買う」を躊躇なく教えてくれた
どうせ男はいつかは覚える事だから早い内に経験してしまえと主人は言
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