火の車と水の車/
こたきひろし
は言った「その先溺れるか溺れないかはお前しだいだから」
と主人は警告をつけ加えた
随分乱暴な教育だったが、私はけっこう深みに嵌まってしまった
社会の序ノ口で
私は気づいたら火の車に乗ってしまっていた
私は三年で東京を棄てた
主人が悪い誘惑にそそのかされて店を失い
逃亡してしまったからだ
それは主人が結婚して子供が出来て間もなくの事だった
私はすっかり人間がわからなくなって故郷に帰った
全ては昭和の時代だった
戻る
編
削
Point
(3)