饒舌なハレーションの朝/ホロウ・シカエルボク
る理由づけのようなものだった、バックヤードで女の泣声が聞こえた、初老の太った女がそこから出て来て商品の陳列を始めた、バイトが激しく叱られでもしたのだろうか、俺はバックヤードに入って行って泣いている女を慰めてやりたかった、気にすることはないよ、彼女にはこれが世界のすべてなんだ、そんなことを言って、まあ、ことが分からない以上、すべては俺の妄想でしかないけれど、泣声がとまらない限り居心地は良さそうではなかった、早々に本を閉じて店を出た、悲鳴を聞いた気がしたが気のせいだと思った、もう少し歩くと無人駅があるはずだった、そこから予定のない旅に出るつもりだったのだ、が、時刻表を見ると電車は出たばかりで、次が来る
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