饒舌なハレーションの朝/ホロウ・シカエルボク
 
にないのだ、スピードを出し過ぎた一台の軽乗用車が自転車のみすぼらしい中年の男を撥ねる、白髪交じりの長髪の痩せた男は路上に投げ出され、寝返りのような動作をしたのちぴくりとも動かなくなった、血は一滴も出なかった、あれは死んでしまったかもしれない、運転席から降りてきた若い女は左手に煙草を持って呆然と男を見下ろしていた、激しいブレーキ音を聞きつけた近くの住民が集まってなにかと世話を焼いている、集まってきた連中の誰もが、それが初めてではないように見えた、若い女もまたぴくりとも動きはしなかった、俺はそこを離れ、閑散としたコンビニでしばらく漫画雑誌を読んだ、それが読みたいわけではなかった、ほんの少し立ち止まる理
[次のページ]
戻る   Point(3)