鳥たちはレクイエムを知らない/ホロウ・シカエルボク
 
は放置されているということだったが、まだそんなに知られていないのか、破損などはひとつもなかった、落書きもだ―わたしは、ひとつひとつの扉を確かめ、開けられるものは開けて中を覗き込み、足を踏み入れた、残留物はほとんどなかった、鉛筆が床に転がっていたりとか、そんなものだった、HB、と金文字で記された緑色のそれは、なぜかそこで見たものの中で一番、わたしの心の奥をキリキリと刺した、大きな建物ではなかった、あと半時間もあれば、二階も見終えてしまうだろう、そう思いながら、二階への階段を上った、踊り場の窓から、校庭に止めたわたしの軽四が見えた。仕事の途中なのだ、一瞬だけそんなことを考えたけれど、すぐに忘れた、どう
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