あじさい/田中修子
 
日中 夜まで降りしきる 赤い麻のカーテンの向こう マンションの窓に橙色のあかりが やがて消えていく時間まで 眠れないでいる 濃紺の夜
(ひとのすくない北の国の夜は真っ黒だった 都会の夜はすこし なにか明るくて目をつむっても 手で瞼を覆っても 隠れることができない)
車のタイヤが雨溜まりをよぎる音は波の音に似ているらしい
海のそばですか とたずねられた
いえ 海のそばではありませんが そうか
水が耳のなかにひたついて なみうっていて あんなにも恋しかった 海の底
が、こんなに近くにあったのだと知る

学名 Hydrangea macrophylla 水の器
七色の小さな手が無数に合
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