不自然な迷子に関しての思惑について/ホロウ・シカエルボク
一刻も早く眠りたかった、あとは夜が明けてから考えればいい、暗闇の中でもかなりの年数が経過していると容易に見て取れるビルの玄関の、シルクハットのつばのようなデザインの古めかしいプラスチックの把手を押すと、簡単に開いた、すぐに広がっているロビーと思わしき空間には何も置かれていなかった、長い間閉じ込められた空気の、ひねくれたにおいがした、ドアから左手側の二面の壁はガラス張りで、弱い月灯りが室内を照らし出していた、ドアの対面の壁、ドアとの睨めっこを避けるような位置に、二階へ行ける階段があった、階段の入口には、小さな手洗いがあった、が、排水管へと繋がるパイプは外されていて、蛇口を捻っても水は出なかった、まあ
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