不自然な迷子に関しての思惑について/ホロウ・シカエルボク
 
は出来立ての死体のように白く、千枚通しで開けた穴のように高く、小さく浮かんでいた、ぼくは、真夜中の海の話を思い出した、数十日に一度、いや、それよりも少ないくらいの割合で、波も、風も、まったくない夜がある、そんな夜はとてもしんとしていて、ただ海面が真っ直ぐに果てしなく広がっている―ぼくがいま立っているここは、そんな夜に似ているのではないかと思った、こちらはとても騒がしいけれど―容赦がないのなら静寂もノイズも印象などそんなに変わらないのだ、金を持っていないわけではなかったが、こんな夜には何の役にも立たなかった、近くに空いてる店もないみたいだったし、自動販売機のあかりらしいものもなにも見当たらなかった、
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