づきづきと心が痛んで/こたきひろし
僕は心の中でそんな正男君に不快感を抱いていました
相手が女性なら抱く筈の好感が
戸籍の上では男性の正男君にはどうしても
受け入れられませんでした
僕はけしてそれをしませんでしたが
わきあがる偏見や差別の心から
周囲から苛めの対象にされていました
僕がその仲間に加わらなかったのは
ひ弱な体と気弱い性格がわざわいして
僕もまたいじめられる立場だったからです
しかし
けして僕は善意と正義の少年ではありませんでした
ただひとえに臆病だっただけでした
あれは
正男君が何日か学校を欠席していた日でした
担任の先生から僕に 学校の帰りに様子を見にいってくるよう
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