写真は真実をどこまで写せるか/こたきひろし
正直
わたしは彼の思い出の品物を
見るのも見せられるのも怖かった
同様に
わたしは自分の思い出を
見せるのも
見られるのも嫌だった
なのにどうして
わたしは思い出を引っ越しの荷物の中に入れて
実家から出てきたのだろう
集合写真のアルバムは
わたしが一番最初に働き出した職場での
社員旅行の思い出をカメラに撮されたものだった
わたしはその中の写真から
特定の人物のところだけ
鋏で切りとっていた
もしそれを彼が見たら
何故だ
と言う疑惑を生むに違いないと思いながら
まるでわざと地雷をしかけて
それが
爆発するのをたのしみに待つみたいに
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